子どもの権利条例
武蔵野市では、令和5年4月に「武蔵野市子どもの権利条例」がスタートしました。
この条例は、武蔵野市が「子どものみなさんが自分らしく、安心して暮らすことのできるまち」、
「子どもの権利が大切にされるまち」となることを目指してつくったまちのルールです。
毎年11月20日を「武蔵野市子どもの権利の日」とします。
子どもの権利とは?
子ども(0〜17歳の人)も、おとなと同じように
一人の人間として『権利』を持っています。
子どもが持っているのは、大人と同じ権利だけではありません。
子どもは、子どものための特別な『子どもの権利』があります。
すべての子どもは、かけがえのない大切な存在です。
世界中の国々が協力して『子どもの権利条約』を作成し、
日本も1994年に条約の内容に賛成しました。
世界的な条約の考え方に基づいて、
子どもが暮らすまちで、子どもの権利を守っていくために、
市の条例を定めました。
武蔵野市子どもの権利条例では、
子どもの権利条約で決められた、多くの子どもの子どもの権利の中でも、
特に大切な権利として定めています。
1
安心して
生きる権利
2
自分らしく
育つ権利
3
遊ぶ権利
4
休息する権利
5
自分の意思で
学ぶ権利
6
自分の気持ちを
尊重される権利
7
意見を表明し、
参加する権利
8
差別されずに
生きる権利
条例について、
詳しくは市HPをご覧ください!
リーフレットと動画ができました!
子どもの権利や「武蔵野市子ども権利条例」の内容を紹介しています。
ぜひご覧ください!
10月1日から
子どもの権利擁護センターが
スタートします
概要
子どもの権利擁護センターは「武蔵野市子どもの権利条例」に基づき、子どもの権利を守り、権利が侵害されたときの救済を行うための相談・救済機関です。
子どもの気持ちを尊重し、子ども自身がもう大丈夫と思えるようになること、自ら課題を解決できるようになることを大切にしながら相談者に寄り添います。
必要に応じて関係機関等に対して調査・調整を行い、市に意見を述べることもあります。
子どもの権利擁護に関する普及啓発も行っていきます。
- 場所
- 武蔵野市役所西棟7階
- 相談受付日
- 月・火・水・金曜日の午後1時から午後5時まで
(祝日、年末年始を除く) - 相談方法
- 電話(子ども専用フリーダイヤル)・来所・手紙・メール(専用フォーム)から相談を受け付けています。
子ども専用フリーダイヤル0120-634-331 - 手紙の宛先
- 〒180-8777 武蔵野市緑町2-2-28 子どもの権利擁護センター宛
子どもの権利擁護センターでは、
市長の付属機関として武蔵野市子どもの権利擁護委員をおき、
子どもの権利が侵害された場合の救済を行います。
子どもの権利コラムでは、3名による対談を掲載中です!
半田 勝久委員
橋詰 穣委員
中 智美委員
子どもの権利コラム
子どもの権利、子どもとの対話に願うこと
~子どもの権利擁護センター設立を控えて~
武蔵野市は2024年10月に子どもの権利擁護センターを設置します。武蔵野市子どもの権利擁護委員を務める半田さん、橋詰さん、中さんにお集まりいただき、子どもの権利に関心を寄せたきっかけから、子どもと対話する上での工夫、子どもの権利擁護センターに込めた期待までを伺いました。
「子どもの権利」に寄り添って
最初にお三方のプロフィールと、「子どもの権利」に興味を持ったきっかけを教えてください。
半田:私は普段、大学で教員や保育士、社会福祉士の養成をしています。担当している講義は「教師論」「子どもと人権」「人権教育」といった科目です。それとともに、自治体の子ども計画や子ども条例の策定・検証、子どもの相談・救済機関の運営にもかかわらせてもらっています。
「子どもの権利」に興味を持ったきっかけは、1989年に国連で「子どもの権利条約」が採択されたことです。当時は、学校における生徒指導の一環で体罰は行われており、教育実習先でも掃除時間中ふざけていた生徒に、私の目の前で体罰がなされましたが、実習生の私は何もすることができませんでした。そこで、卒業論文は、「子どもの権利と体罰」をテーマにしました。その頃、日本でも条約の批准運動が活発に行われることになり、どうすればこの条約が「絵に描いた餅」にならないよう、機能できるか考えていきました。調べていくと北欧には子どものためのオンブズマン制度があるということを知り、それはどういう制度で、どのような役割を果たしているのか明らかにしたいと思い、修士論文で「ノルウェーにおける子どものためのオンブズマン制度」を取り上げたのが、その後の人生の大きな岐路になりました。
中:私は法学部の出身で、大学院では社会福祉学を専攻していました。現在は公認心理師として、“子どもの権利を基盤とした子どもの福祉”というテーマで実践と研究を進めていきたいと考えています。
「子どもの権利」というところに興味を持ったきっかけですが、私自身はかねてから子どもを取り巻く問題に関心があり、20年余り家庭裁判所で働いてきました。その中で、子どもが大人からちゃんと見守られながら育ち、「あなたを大切にしているよ」というメッセージを、しっかり受け取っていることがその子の人生においてとても重要だということを実感してきました。
そのためには、子どもの主体性を尊重しながら、子どもにとって最も良い形を子どもと一緒に考えて決めていくという大人の姿勢が大切で、それが、子どもの権利を尊重することにつながると考えています。
橋詰:私は弁護士をしていますので、専門は法律になります。憲法や子どもの権利条約、こども基本法などの考え方を大事にしながら、子どもの権利を保障していくという視点を常に心がけていきたいです。
子どもの権利に関心を持ったきっかけとしては、私が子どもの頃の将来の夢が学校の先生であったということに遡ります。私自身が小学生や中学生の頃にとても素敵な先生方に出逢って、自分もそういう大人になりたいなと思ったことが今に通じています。
結局、教員ではなく弁護士になりましたが、少年非行や児童虐待の事件を取り扱ったり、学校に出向いて授業をしたりといった活動に力を入れています。その中で子どもたちとも直接接しますし、子どもの権利について考えさせられることも多いです。
良い先生と出会ったとのことですが、どんな点が嬉しかったとか、先生との思い出ですとかはありますでしょうか?
橋詰:小学校の頃は、先生が一緒に遊んでくれたり、話を聴いてくれたり、同じ目線で物事を考えてくれたりしたことが嬉しかったです。
中学校では、自分たちの意見を尊重して学級運営をしてくれる先生が印象に残りました。何か決めるときに学級会を開かせてくれて、みんなで決めたことを尊重してくれる、僕らの考えを尊重してくれる先生のクラスがすごく楽しかった思い出があります。
最近の子どもの権利に関する社会情勢や課題について、皆様はどのようにお考えでしょうか?
中:いじめや虐待、貧困など昔からある問題が、今なおうまく解決できていません。
こども基本法ができて、国内法が整備されたわけですから、これからは子どもを取り巻く環境や問題を点検し議論していく必要があるのではないかと思っています。
橋詰:この20年くらいを振り返ると、いじめや虐待、体罰などから子どもを守る、という社会の意識や法整備はある程度進んできた印象です。一方で、子どもを保護の客体ではなく権利の主体として尊重し、子どもの声を聴くという部分では、なかなか進まず、令和4年になってようやくこども基本法が成立しました。
そういった意味では、これからの10年20年でこども基本法のベースにある考え方、子どもを権利の主体として捉える考え方をいかに普段の生活の中で浸透させられるか、私たちが当たり前の感覚として持てるようになるかというところが問われてくるのではないでしょうか。
半田:いじめの認知件数や不登校の子どもの数、児童相談所における児童虐待の相談件数は増えています。リーマンショック、コロナショックにかかわる様々な影響も大きいです。そうしたなか、グローバル化、情報化の波が押し寄せ、子どもや家庭を取り巻く環境は、複雑化しています。そのため、それぞれの子どもへの対応が丁寧になされることが求められますが、おとなも大変な状況で、子どもの気持ちに寄り添ったり、子どもの意思を尊重したりすることができていない場面も多いと考えます。
子どもの権利擁護センター設立を控えて
さて、10月1日からは子どもの権利擁護センターが設置されます。どのような場所を想定されていますでしょうか?
中:普段は専門相談員の方がいらっしゃって、電話で寄せられる相談や、突然の訪問などに対応してくださいます。私たちは相談員さんから連絡を受けて、子どもの権利侵害があるのではないかと疑われる場合や、今後の方針を決める必要があるときには、お子さんや保護者の方とお話をさせていただく流れになります。
橋詰:理想としては、子どもの権利擁護センターが、何か困ったことがあったり、何か話したいことがあったりしたときに、いつでも来られるところ、いつでも話ができるところになれたらと思います。いいことも悪いことも何でも聴かせてねというスタンスでいられたらと考えています。 “何でも話せる友達”みたいになれたらいいですね。
子どもたちの中には、相談したいことがあるけれど相談に行くか迷っている、あるいは、どのように相談していいのかわからないという方もいると思います。
半田:確かに相談するって、すごく難しいことだと思います。そこで、リラックスでき安心できる雰囲気の中で、遊び感覚も取り入れ、話を聴ける環境を整えることが大切です。例えばトランプ形式で「このカードが出たらこの話をする」みたいな工夫があってもいいと思うんですよね。これから作っていきたいなと思うのは、武蔵野市子どもの権利擁護センター用の「すごろく」みたいなボードゲームのようなもの。例えばサイコロでここに止まったら今日の気持ちを答えてみる、とか、次のところに止まると今大切にしているものを答えるとか。それを一緒にしていく中で、子どもがどういうことを考えているのか、あるいは私たちがどういう人なのかということを、共有していくってすごく大切だと思うんです。
なるほど。今のアイデアもそうですが、子どもたちが安心して意見を言うために、周りの大人に求められるのはどのようなことだと思いますか?
中:以前、別の子どもの相談機関に電話をかけてきてくれたお子さんに「次までに良いアイデアを一つ考えてみてね」って伝えたところ、そのお子さんから「中さんも考えてみてね」って言われたことがあったんですけれど、そういうふうに“一緒に考える”という姿勢が大事かなと思っています。
半田:こちらが何か答えを用意したり、特定の方向に導いたりといったことがないような形で関わりたいです。話を聴いて、「そうか、それ苦しいよね」とか、「そういうふうな考え方もあるよね」といった形で、一緒に考えていくっていうことを大切にしていくのが、私も一番重要なのではないかと思っています。
橋詰:まずは最後まで落ち着いて聴いてあげること。すごくシンプルだけど、それが大事だと思います。
例えば「ダメ」と伝える前に、「なぜそう思ったの?」「なんでそう考えたの?」っていう部分を確認してあげる。その子が意見を言うまでには、その子なりに頭と時間を使って考えたプロセスが必ずあったわけですよね。そこをきちんと認めて受け入れてあげて、「だからそう考えたんだね」と、考えたこと自体は肯定してあげる。そうやって子どもなりの理由を聴き出してあげることで、子どもとしては「ちゃんと自分の話を聴いてもらえたし、自分が考えたこと自体を肯定してもらえたんだ」と、納得感も違ってくるのではないでしょうか。
中:子どもの発言に対して、言葉だけを独り歩きさせて責任を取らせようとしてしまわないようには気を付けています。その子が発した言葉を大事にしながらも、周りにある“その子の気持ち”に思いを寄せて、一緒に迷いながらどうしたら良いかを考えていくことが大事なんじゃないかな、と思います。
昨今はインターネットの普及なども相まって、私たちは答えにたどり着きやすい環境にあります。反面、答えが見つからないもどかしさ・苛立ちのようなものを感じている子どももいるのではないでしょうか?
橋詰:そうですね。でも、だからこそ、私は「あなたはどうしたいの?」という問いかけが大事になると思っています。もしそこにいくつか選択肢があるのであれば、それぞれの選択肢の何がメリットで何がマイナスなのかということを整理して、最後はやっぱりその子が自分で決める。その決めるための材料を周りが整えてあげる、という姿勢が大事かなと思います。
半田:考える材料をいろいろなところから集めてきたり、次までに調べておいたりして、それをもとに一緒に考えていくという“プロセス”がすごく大切なんじゃないかなと思います。
橋詰:本人の中でごちゃごちゃになってしまっているものを整理整頓するだけで、気持ちが楽になったり、答えが見えてきたりすることって子どもに限らずありますよね。
いつでもそばで応援する存在であるために
子どもたちが子どもの権利擁護センターを利用しやすくするために、何か工夫されていることはありますか?
半田:法律相談やカウンセリングの場合は、30分ほどの枠の中でと決められている場合が多いですが、私たちは相談できる時間の範囲内でできる限りゆったりと話を聴き、気持ちを整理するお手伝いができる場になれたらと思います。
中:先ほど橋詰先生から「何でも話せる友達」という言葉がありましたが、今回「子どもの権利擁護センター」という名前にして、あえて「相談センター」としなかったのは、そういった背景もあります。相談に限らず、話し相手が欲しい時でもいいし、ちょっと興味があったからというだけで来てもらってもいいし。
半田:運営の在り方としても、できるだけフレキシブルに対応していければと考えています。市役所の中に設置されてはいますが、他の武蔵野市が運営しているような場所へ出かけて行って、そこで話を聴かせてもらうような取り組みもしていければと思っています。対応する時間についても、17時までという制約こそありますが、時と場合に応じて柔軟な対応を心掛けていきたいです。
では最後に、子どもの権利擁護センターの利用を考えている子どもたちへ、メッセージをお願いします。
橋詰:一緒に喜んだり、一緒に悩んだり、一緒に考えたり、「なんでも話せる友達」として、いつもそばで応援する存在でいたいです。
中:何でも、話したいときに話を聴かせてくださいね。
半田:「大丈夫、きっと大丈夫」ってことを伝えたいです。その時は“本当に辛くて死にたい”とか、“人生終わった”とか、そんな感じになることが多いかもしれないけれど、時間が解決してくれたり、話を聴いてくれたり、助けてくれる人が出てきたりします。はじめて利用するときは不安でいっぱいかもしれませんが、「大丈夫、うまく伝えられなくても平気だよ。気持ちを確認しながら協力するからね。」と安心につながるような寄り添い方をしていきたいです。
こどものけんりってなあに?
「子どもの権利を守るために、どうすればいいの?何が大切なの?」そんな子どもの皆さんのために半田先生に子どもの権利についてインタビューしました。家庭や学校、地域のおとなの皆さんも、子どもの権利を守るため、一緒に考えながらぜひお読みください。
(※令和5年度特設サイトで公開したものの再掲となります。)
子どもの権利とは何ですか。子どもとおとなに役割はありますか。
みなさんは、普段の生活で、ご飯を食べる、友だちと遊ぶ、学校に行くなど、たくさんのことをしていますよね。このように私たちが生きるうえであたり前にしていること、したいことを「していいんだよ」「できるんだよ」と約束されていることが「権利」です。子どもの権利のなかには「安心して生きる」「自分らしく生きる」「自分の意思で学ぶ」「自分の気持ちが尊重(大事に)される」などの権利があります。これは地球上の子どもがもち、おとなや国はそれを尊重しなければならないと「子どもの権利条約」という法で約束されています。
「権利を守る」ことも大切です。たとえば差別されたり、いじめられたり、たたかれたり、ご飯を食べさせてもらえなかったりするのは、権利が守られていないことになります。子どもは、おとなに助けてもらわないと生きていくことがむずかしいですよね。そのため、差別されない、いじめられない、暴力を受けない、家族と離ればなれにならないといった権利は、特に守らなければいけません。おとなは、子どもを一人の人間として尊重し、子どもの権利が保障されるような家庭環境やまちをつくらなければなりません。すべての人がお互いの権利を理解、尊重し合うことで、それぞれの権利を守ることができるのです。
子どもの権利を子どもとおとなに理解してもらうために何が必要ですか。
「義務教育」という言葉を聞いたことがあると思います。義務とは「しなければいけないこと」です。これを踏まえると、義務教育はどういう意味でしょうか。「学校に行かなければいけないこと」「勉強しなければいけないこと」と考える人もいるでしょう。そう考えると「自分はしなければいけないこともできないダメな子なんだ」とつらくなってしまう子どももいます。学校に行く、あるいは教育を受けることができるのは、義務ではなく、子どもの権利なのです。
義務教育は、子どもの権利を守るために、親や自治体(市や町)が「しなければいけないこと」です。たとえば親には、子どもに9年間の基礎的な教育を受けさせる義務があります。自治体には学校や多様な学びの場をつくり、お金に困っても教育を受けられるよう助ける義務があります。
義務教育を例に考えてみても、子どもの権利が十分に理解されているとは言えません。その理由として、子どもの権利について学校や家庭で学ぶ機会が少なかったことが考えられるでしょう。子どもの権利を理解してもらうには、分かりやすく学べる機会が学校や家庭などいろいろな場で用意されていることが必要です。
自分の意見を言うことは、なぜ大切なのですか。また、どのように伝えるのが良いのでしょうか。
子どもの権利には「意見を表明し、参加する権利」もあります。ただ、子どもによっては、意見を表明することが難しい場合があります。赤ちゃんや低年齢の子どもは、特にそうですよね。にもかかわらず、自分に関することが、自分以外の人だけで決められてしまうのは残念なことです。だからこそ、子ども以外の立場の人には、言葉だけではなく、表情や態度での表現も受け入れることが求められます。これは「子どもの気持ちを尊重する権利」を守ることにもつながります。
さまざまなことに対して自分の意見を言えると、心の準備ができるし、やる気もでるし、納得もできます。一方、友だちや家族、先生と自分の意見がうまく合わないこともあります。たとえばゲームやおもちゃの遊ぶ順番で もめたり、食べたいご飯が家族と合わなかったりした経験がある人も多いはずです。こうした場合には、自分の意見がとり入れられなかったりうまく意見が言えなかったりして、いやな気持ちになるでしょう。そうならないためには「何回かやったら交代する」というルールを決めたり、「今回はこうしたから次は別のにしよう」などのようにお互いが納得したりできるような意見を出し合えるといいですね。
子どもの権利を守るために、学校や家庭で何ができますか。
子どもの権利条約には、4つの大切な考え方(4つの一般原則)があります。それは「命を守られ、成長できること」「子どもにとって最もよいこと」「意見を表明し、参加できること。自分の気持ちを尊重されること」「差別のないこと」です。おとなが子どもの権利を守るためにどうしていいか分からなくなったときは、この原則に立ち返りましょう。問題解決につなげることができます。
たとえば、いじめについて考えてみましょう。いじめが発覚したときは、状況や経緯を判断することが求められます。対応としては、いじめられた子どもを守ることが最優先です。いじめてしまった子どもがその行為を反省し、二度としないように成長できることも大切です。
いじめに加わった人や見て見ぬふりをした人が、いじめを止められなかった理由を考えたうえで、いじめをなくすにはどうすればいいのか、話し合うことも重要です。親としては、わが子を守るために「いじめられた子どもも悪いのではないか」「いじめをするなんて、とんでもない子どもだ」「うちの子も被害にあうかもしれないのに、止められるはずがない」などと考えてしまうこともあります。そうしたとき、「子どもにとって最もよいことは何か」などの4つの一般原則の視点で子どもと親、先生が真剣に考えることができれば、いじめの解決につながるのではないでしょうか。
相談してもらうために、どんな工夫をしていますか?
おとなは「悩んだときは相談して」と言いますね。でも、子どもたちは「何を相談すればいいの」「相談してどうなるの」と悩むこともあります。そもそも「相談室に入るのを見られたくない」「親にも先生にもばれたくない」「どうせ気持ちを分かってもらえない」などと考え、ためらうことも多いです。
子どもたちからは「秘密を守ってくれる」「笑顔でむかえてくれる」「リラックスできる」「うまく話せなくても聞いてくれる」「気持ちに寄り添ってくれる」「一緒に解決策を考えてくれる」ことを望む声が聞かれます。そのため、子どもにあった相談方法や環境の準備と寄り添い続ける姿勢が大切です。
近年、子どもの権利擁護委員を設置する自治体が増えています。相談方法に電話やメールなどのほか、オンライン面談を取り入れているところもあります。擁護委員は悩みを解決するため、子どもの権利条約の4つの一般原則に沿った対応を基本にしています。子どもが希望する場合には、関係するおとなにその子の気持ちを伝えることもあります。擁護委員は、子どもが安心して生活できる環境を整えるために活動しています。
子どもたちに向けてメッセージをお願いします。
武蔵野市は、2023(令和5)年4月1日に「子どもの権利条約」の理念をいかした「子どもの権利条例」をスタートさせました。これは「子どもが自分らしく安心して暮らせるまち」「子どもの権利が尊重されるまち」の実現に向けて、子どもの権利を守るおとなの役割、取り組みなどを示した条例です。子どもやおとなが、子どもの権利を知ったり考えたりできるイベントも行っていきます。来年には、子どもが安心して相談できる窓口をつくり、子どもの権利を守るため「子どもの権利擁護委員」を設置します。子どもが自分の権利をあたり前のように使える、あわせて子どもの権利を守る環境が整っていくことを楽しみにしていてください。
半田 勝久(はんだ かつひさ)
日本体育大学准教授。子どもの権利条約総合研究所事務局次長、子どもの相談・救済に関する関係者会議コーディネーター、世田谷区子どもの人権擁護委員、小金井市子どもオンブズパーソンなど。令和5年度から、武蔵野市子どもの権利部会部会長としても活動している。
「おしえて 新保先生!」
「子どもの権利って具体的に何をすればいいの?」「子育てに自信がありません」そんな皆さんの疑問や悩みを、子どもの権利や保育の専門家、新保先生にお聞きしました!
(※令和4年度特設サイトで公開したものの再掲となります。)
子どもの権利とは何ですか?
子どもの権利は、大きく分けて、「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」の4つに分類できます。ポイントは、人間である権利だけではなく、親や社会から、養育を受ける権利も合わせもつ点にあります。2019年にポーランドに行った時に(ポーランドは子どもの権利条約を国連に提案した国です)「子どもではない、そこにいるのは人間です」というテーマを受け取ってきました。つまり、子どもは未熟で、足りない存在であるという考え方ではなく、そもそも人間であるという土台があって、その上に養育を受ける権利があるという考え方です。大人と同等にプライバシーも保護されなければいけませんし、思想や表現の自由もあります。子どもだからといって、対話もせずにルールに従わせたり、意見を無視することは、権利を守っていないことになります。
私の子どもは、まだ1歳にも満たない乳児です。権利を尊重すると言われても正直ピンときません。何をすればいいのでしょうか?
子どもの人権の中に、意見表明権という文言があります。これは、子どもが感じたままに意見を言うことができるという大切な権利です。乳幼児は自分で意見を言えないじゃないか、それでは権利なんて守りようがない、と思うかもしれませんね。でも、よく見て欲しいのです。乳児も、たくさん表現しています。泣く、笑う、目を見る、手を握る、そんなサインを出して、嬉しい、好き、おなかが減った、うんちが出た、様々な意見を伝えようとしているわけです。
なるほど・・・でも、子どもがどうして泣いているかわからない時も多いのですが、どうすればいいでしょうか?
どうして泣いているのかわからない、そんな時もありますよね。子どものことが理解できていないと自分を責めたり、落ち込んだりするかもしれない。大切なのは、わからないなりにも、きちんと受け止めて、何かしてみることです。理解しようとしている姿、サインを受け止めて行動する姿を見せてあげてください。正解ではなかったとしても、自分が大切に思われている、尊重されていると、子どもが感じられることが大切です。
子どもがすぐにわがままを言うので困っています。権利を大切にすることで、更にわがままに育ってしまうのではないかと心配です。
子どもの権利について話をすると、そのような心配をする方は多くいらっしゃいます。しかし、私は今の日本の子どもたちがわがままだと感じたことはありません。不登校や家庭内暴力をするような子どもたちも多く見てきましたが、子どもたちを受け止められていないことが大きな問題だと感じています。
では、わがままはそのままにしておいてもいいのでしょうか?
乳幼児期には、遊びの中でおもちゃの取り合いが起こったり、興奮しすぎてケガをしたり、させたりというトラブルが発生します。それを大人が子どもの育ちに応じた声掛けなどをすることで、少しずつ自分でコントロールしていくことを覚えていきます、この育ちを大切にしてください。子どものうちにわがままをさせることが先なのに、大人が先回りして抑え込もうとしたり、トラブルを避けようとしたりすることで、心が育つ機会を奪ってしまっているのです。それに、わがままな子だと思ったとしても、四六時中ずっとわがままなわけじゃない。私は24時間わがままな子も、反対に24時間いい子もいないと思っています。大人だってそうですよね、ずっと優しくにこにこしている人なんていないし、ずっと怒ってイライラしている人もいない。子どもだけではなく、障がい者や高齢者に対しても、差別なく全員の権利が尊重され、受け入れて許し合える社会にしていきたいですね。
だんだん子どもも自分でできることが増えてきますが、子どもの成長にともなって、親に求められることはなんでしょうか?
0歳の時は何から何まで親がやってあげなくちゃいけないけれど、だんだん自我が芽生えて、自分で考えて行動することができるようになってきます。大人と同じくらいの脳になるのは、14歳ごろと言われています。親に求められるのは、子どもの発達を見ながら接し方を変えていくことです。
具体的に、どうやって変えていくのでしょうか?
例えば、2歳くらいの子どもにくつ下をはかせようとした時に「イヤ!」と拒否されたとします。その時に「ちゃんとはきなさい!外は寒いよ!」と声をかけても、きっとその子は更に拒否するだろうと想像できます。ある先生に教えてもらったのですが、そういう時は「赤いくつ下がいい?青いくつ下がいい?」と声かけをするとどちらか自分で選ぶそうです。つまり、イエスかノーではなく、AかBの聞き方に変える、ということです。親としては、イライラしてしまう状況ですが、自我が芽生えてきたんだな、と思って接し方を工夫してみることが大切です。
子どもが中高生くらいになったらどうでしょうか?
中高生くらいの年齢になると、子どもの考えていることがわからなくなったり、交友関係に口を出したくなることがあるかもしれないですね。その時に気をつけて欲しいのは、子どもの友達を悪く言ったり、趣味や好きなことを否定することは、絶対にしてはいけないということです。その子を否定するメッセージになってしまいます。私自身、そのくらいの年齢の子と接する時は、同じものを食べますし、その子が見ている映画やテレビを見て、その子が読んでいる漫画を読みます。子どもと同じことをすることで、わかることはできなかったとしても、わかろうと思っている自分は伝えられるからです。あなたのことを愛している、理解したい、そういうメッセージを子どもたちに伝えることが大切です。
子どもに対してイライラしたり、叱ってしまい、そんな自分が嫌で、子育てに自信がもてません。どうすればいいでしょうか?
まず第一に伝えたいのは「子育ては下手でいい」ということです。イライラするのも、叱ってしまうのも当たり前なのに、様々な情報があふれていて、うまくやらなきゃいけない、こういう子育てをしなきゃいけないって、息苦しい思いをしている親御さんがすごく多い。特に、今までバリバリ仕事をしてきた方に多いように感じます。勉強や仕事は、頑張れば一応結果が出る、けれど、子育ては結果なんて出ません。子どもが1歳なら親も1歳、いきなり全てが理想通りにうまくいくわけがない、そういう気持ちでいきましょう。何より大事なのは、子どもに対して「愛している」と伝えることです。どんなにイライラして叱ってしまったとしても、1日に1回は、必ず体に触れて、目を見て、笑顔で名前を呼ぶ、それだけで十分です。イライラしない親であることよりも、「あなたが大切」「あなたが生きていることが素晴らしい」それを自分なりに子どもに伝えられる親であることの方が重要です。
ありがとうございます。気持ちが楽になりました!それでも落ち込んだり悩んだりしてしまったら、どうすればいいでしょうか?
夜泣きはいつおさまるのか、イヤイヤ期はいつまで続くのか、子どもに手をあげてしまった、1人で悩むのって苦しいですよね。そんな時は、1人で抱え込まず、ぜひ先輩を頼って下さい。武蔵野市には、子育てひろばも、保育園もありますし、地域には素晴らしいサークルもあります。1人で悩んでいると、苦しい状況がこのまま続くんじゃないかと、どんどん悪い方に考えてしまいます。頼もしい子育ての先輩や、同じように悩みを抱える仲間がたくさんいますから、どんどん相談して、1人で悩まない、これが大切です。
新保 庄三(しんぼ しょうぞう)
子ども総合研究所代表・一般社団法人日本保育者支援協会共同代表・社会福祉法人土の根会理事長。武蔵野市保育総合アドバイザーとして研修・相談活動に従事。1970年保育・福祉の専門出版社を設立。1987年子ども総合研究所の設立に参加。上越市の世代間交流保育システム構築研究会顧問、財団法人東京都助産師会館理事・評議員、東村山市花さき保育園園長等を経て現職。著書『保育者のための コミュニケーション・トレーニングBOOK』(汐見稔幸・新保庄三編著、ぎょうせい、2019年)、『子どもの「じんけん」まるわかり』(汐見稔幸・新保庄三・野澤祥子著ぎょうせい、2021年)ほか。
子どもの権利の日イベント
11月4日子どもの権利の日イベント
11月20日の「武蔵野市子どもの権利の日」を記念して、
劇団ポプラによるミュージカル「オズの魔法使い」を上演します。
会場ロビーでは、武蔵野市子どもの権利条例や
市内の子育て支援施設に関する情報が手に入る展示を行います。
また、武蔵野市子どもの権利条例マスコットキャラクターミミワンのフォトブース、
塗り絵、折り紙などもご用意しています!
イベント概要
武蔵野市子どもの権利条例
マスコットキャラクター ミミワン
- 日時
- 11月4日(月・振休)
午前10:45時〜午後0:30(休憩15分)
開場10:00 - 会場
- 武蔵野市民文化会館 大ホール
- 対象
- 市内在住・在学・在園の未就学児~高校生世代の子どもとその保護者
- 定員
- 約1200名(応募人数を超えた場合は抽選)
- 費用
- 無料
- 申込
- 10月7日(月)までに下記お申し込みフォームから。10月15日以降に抽選結果を申込者宛にメールでお知らせいたします。
※子どもの権利の日イベントは武蔵野市と(公財)武蔵野市子ども協会の共催事業です。大和証券(株)から(公財)武蔵野市子ども協会への寄付金を活用し実施します。
【お申し込み時の留意事項】
- ※小学3年生以下の方は、保護者同伴での来場をお願いします。
- ※小学4年生以上は子どもだけで来場ができますが、必ず保護者の同意を得てから応募してください。
- ※18歳以上の方のみの応募はご遠慮ください。
- ※座席は指定席となります。
- ※1グループにつき応募は1回のみ、4人まで一緒に応募できます。
- ※イベント当日は、原則自転車または公共交通機関でのご来場にご協力ください。なお、車の場合、駐車場の台数に限りがございます。
また、有料となっていますので、ご注意ください。 - ※本事業の運営の一部(抽選・案内メールの送付等)は、外部業者に委託します。運営にあたり、Eメールアドレス等の個人情報を委託事業者に提供します。なお、個人情報は本目的以外には使用いたしません。
トピックス展示
子どもの権利に関する図書展示
市内3か所の図書館において、「子どもの権利」をテーマとした図書展示を行っています。
この機会に子どもの権利について一緒に考えてみませんか?
吉祥寺図書館
10月4日(金)〜10月17日(木)
武蔵野プレイス
10月21日(月)〜11月3日(日)
中央図書館
11月13日(水)〜11月26日(火)